ぐるっと甲斐駒

南アルプスの甲斐駒ヶ岳へ。定番の黒戸尾根ピストンではなく、日向八丁尾根を回る環走コース。いろんなものが凝縮された最高のコースだった。詳細はYamapにて。

以前は山登りをマラソンの練習だと思うふしがあった。最近は、マラソンで鍛えて山登りをする、と考えるようになった。ちょっとした差のようで、これがけっこう違うもので、つまりライスカレーとカレーライスみたいなものだ。

ぶたとの再会

駒沢公園でキロ4の日。

ガーミンがGPSをつかむまでの間ぼんやりとランナーを眺めていた。ゆっくりの人も、速い人も、走るペースがその人によく似あっている。そういうのって、なんだかいい。

とりあえず今日は小手調べにキロ4で5周(10.7km)。限界付近ながらも息が思ったほど上がらず、嫌な苦しさはなかった。坂道インターバルのおかげだろう。目標のキロ4はクリア。

Lap (2.14km)TimePace
18:29.33:58/km
28:29.03:58/km
38:27.43:57/km
48:37.44:02/km
58:22.63:55/km
10.7km42:263:58/km

8か月ぶりに再会したぶたは元気そうだった。

お漏らしパンツ問題

汗ジミが目立つ生地の短パンで汗をかくと、股にお漏らしのようなシミができる。股にシミがあるだけで人はたやすく尊厳を失うもので、短パンの汗ジミってのは男の股間、じゃなくて沽券こけんに関わる問題だ。

新しい短パンを買った。濃いめのブルーで、水を吸わなそうな生地。これなら汗ジミは大丈夫だろう。そう思っていた。

いざ走ってみるとこれが完全なお漏らしパンツ。しかもロング走で履いてしまったものだから、ずっとお漏らしをさらし続ける羽目になった。駅前の人混み。下校中の高校生の列。股にシミを付けて、たくさんの人とすれ違った。

漏らしたわけではない。でも不思議なもので、気分は漏らしているのと変わらない。

薄暗い取調室で刑事が机をバンと叩き、電気スタンドで顔を照らす。「漏らしたんだろ?」。そんな風に凄まれたら、「も、漏らしました」と自供してしまうだろう。

かつてドイツの研究所である心理実験が行われた。人道に反する実験として今では法律で禁じられている。それはお漏らしパンツ実験というものだ。と言われたら信じる。

長くなったけれど要するに短パンは黒がいい。

ぶらり36km

漫然と走るのが好きだ。ぼんやりと、追い込まず。

今日は35kmほど走ることにした。山登りの体力をつけておく。寒くなる前に南アの甲斐駒に行きたい。

年々、ロング走の準備が簡素になってきた。持ち物はSuicaと千円札と家の鍵だけ。で、ウィダーゼリーのパチモンをキュっと飲んで出発。水分はコンビニで買って握りながら走る。ロードでのロング走はこのスタイルが気に入っている。

水分をどうやって持ち運ぶかはなかなか難しいテーマで、手持ちは慣れるまでは多少うっとうしいけれど、余計な道具が増えないのと、飲みたいと思ったらすぐに飲めるのがいい。

ペースを設定せずに気楽に走っていたら、30kmが気持ちよく走れた。そこからは申し訳程度にペースアップ。35kmのつもりが家までたどり着けず、1km増えて36km。平均5:15/km。

LapTimeLapTimeLapTime
15:21165:16314:47
25:08175:33324:49
35:27185:21334:46
45:08195:11344:49
55:19205:17355:07
65:25215:31364:32
75:13225:25
85:29235:08
95:22245:29
105:20255:36
115:21265:30
125:23275:25
135:06285:12
145:07295:13
155:18305:16
36km5:15/km

坂バル

坂道インターバル、略して坂バル。坂でがんばる、坂バル。

近所の坂まで1kmほどのんびりと走って、坂の下に着いた瞬間、すん、と立ち尽くした。あれ、今日はダメかもしれない。キロ7分で5kmくらいの気力しかない。昼寝の寝起きのせいかな。

やる気が降ってくるのを待って、軽いストレッチなんかをしてみるけれど、ぜんぜん降ってこない。坂バれないかもしれない。

400mを8本の予定だけど、とりあえず1本だけやるか。それで目が覚めるかもしれないし。ってことで、走り出してみれば、身体は動く。ただやる気がないだけ。そのまま、すん、と走り続けた。4本で限界かもなんて思いつつ。

4本目を終えてみると、あと2本くらいはやれそう。すん、も抜けてきた。そんな感じのなりゆき任せで、結局8本を崩れずに走りきることができた。終わってみれば、気分よし。

Lap (400m∠4%)TimeRecovery
11:26.22:30.2
21:28.52:38.3
31:26.42:37.9
41:27.52:39.6
51:28.82:41.6
61:27.02:44.5
71:29.02:42.9
81:28.5
Total: 30:17

ペース走という名の全力走

小出監督のサブ3用練習メニューでは、水曜日はだいたいキロ4分のペース走。キロ4分は私にとっては全力なので、要するに毎週全力で走ることになる。

小出さんのさじ加減は絶妙で、やっとキロ4分で走れるようになっても距離が伸びるので、結局いつも全力で走らされる。ペース走とかそういう呼び名は実はどうでもよくて、サブ3あたりに走力をもっていくには、とにかくキロ4分で走れる距離を伸ばすことが大事なのだと思っている。

アフリカのマラソンを牽引してきたランニングコーチのレナート・カノーヴァさんが、こんなことを言っていた。

“20kmを1時間以内で走れ。ヨーロッパの選手は少しペースを落として1時間走る。アフリカの選手は40分走って止まる。アフリカのやり方を10回繰り返すと、1時間走れるようになる。”

たとえ目標ペースで走って撃沈したとしても、目標ペースで走ることが大事なのだろう。

今日はキロ5分あたりで入って、キロ4分で走れるだけ走った。近所を走っていると、駅前はやたら歩きスマホが多い。なので、歩きスマホはゾンビだと思って、的確にかわすのをミッションとしている。ぶつかったら食われる。奴らは突発的に進路を変えたり、無駄にふらつくこともあるので、常に行動を先読みすることが大事だ。

そもそもキロ4分で歩道を走るのは暴走族みたいなものだし、近所は丘陵地帯でアップダウンが多いので、そろそろ駒沢公園か日産スタジアムに行きたい。

Lap (1km)Time
14:47.2
24:47.9
34:08.5
43:57.1
53:56.8
63:57.8
74:18.8
84:03.6
94:22.4
104:00.8
10km42:21

キロ5分で19km

涼しくなってきたとはいえ、気温25度。走るにはまだ暑い。気楽に走るとキロ6分ほどになるところを、キロ5分でEペース(Easyペース)のふりをして走った。けっこうちゃんと走っている感覚。

毎年のことだけど、この時期はキロ4分で走れる気がまったくしない。2か月後に、キロ3分55秒あたりでハーフを走りたいのに。

20km走ったつもりが19kmだった。年々雑になっていく。

坂道ダッシュはじめました

そろそろ、始めるか。9月だし。

花粉症の春と、梅雨と、クソ暑い夏はあまり走らないのが恒例なのだけど、今年はジムのトレッドミルを使うようになって、週2で1時間ほどは走っていた。やらないよりはまし、ってくらいなもんだけど。

  • 傾斜15%、7.5km/hで30分
  • 傾斜0%、15~16km/hで30分

トレッドミルは脚に優しい。うまく使えば、怪我を予防しつつ、効果的に心肺を追い込めそう。でも、あまりに汗だくになるから、まわりに汗を飛ばさないようにけっこう気をつかう。タオルで拭き拭き走る。

新たな発見があって、ジムではスポーツドリンクをやめて、麦茶を飲むようになった。麦茶のほうがずっとおいしいし、大量の汗をかいても体調的になんら問題がない。走るときはスポーツドリンクという固定観念があったけれど、いうほどこだわることもないんだなと気が付いた。

今シーズンはハーフマラソンの抽選がよく当たって、世田谷246MINATOシティに出ることになった。 フルの予定は、東京マラソンの抽選が外れるのを待ってから考える。

現状はスピードが圧倒的に足りないので、まずは坂道インターバルから始めることにした。近所の陸橋で400m(傾斜4~5%ほど)を8本。思ったよりも走れはしたものの、ラスト1本はへろへろ。走り終わって家に帰ってもまだ少し息が荒れていた。

Lap (400m)TimeRecovery
11:25.52:36.5
21:26.42:34.7
31:27.22:44.2
41:25.52:50.9
51:28.42:47.4
61:27.92:57.2
71:27.63:08.1
81:30.6
Total: 31:18

紀州口熊野マラソン

2月3日、紀州口熊野マラソンで2時間55分切りに挑戦した。

55分切りにはいくつかの意味がある。別大のカテゴリー2、東京マラソンの準エリート基準、そして1908年ロンドンオリンピックの優勝記録、2時間55分18秒。これは世界で最初に42.195kmで開催されたレース。つまり55分を切れば、オリンピック優勝ってことだ。さらにいうと、幻の記録、2時間54分46秒を切りたいところ。

千鳥足のお手本

ロンドンオリンピックでトップを走り、最初にオリンピックスタジアムに駆け込んだのは、イタリアのドランド・ピエトリだった。彼は疲労と脱水ですでに意識が朦朧としていて、トラックに入ると順路を逆走してしまう。正しい方向へと誘導されたとき、ドランドは倒れてしまった。大会スタッフに支えられて立ち上がり走り出すものの、また倒れる。立ち上がり、倒れる。それを何度かくり返し、生まれたての小鹿状態でどうにかゴールした。その壮絶な走りは観衆を感動させた。

しかし、スタッフの助力があったことで失格となり、優勝は幻となった。その記録が2時間54分46秒。ドランドの悲劇は、マラソンの故事を思い起こさせる。

ゴールのお手本

話は紀元前490年までさかのぼる。ギリシアの都市マラトンにペルシア軍が侵攻して、アテナイ連合軍が応戦。その結果、アテナイ連合軍が勝利した。一刻も早く勝利の報告をアテナイに伝えるため、伝令のフェイディピデスは走った。マラトンからアテナイまで、およそ40km。彼は全身全霊でひた走り、本部に勝利を伝えるとそのまま息絶えた。

そういうわけで、42.195kmがマラソンの正式な距離として採用されたのは、ドランドの悲劇の影響が大きい。

前置きが長くなりすぎた。そろそろ今回のレースの話。

スタートまで

マラソンは記録を追いかけるばかりではなくて、せっかくなら旅も楽しみたい。紀州口熊野マラソンは、レース後に熊野古道を散策したくて選んだ。

2000人規模のこじんまりとしたレースながら、陸連公認コース。いちおう私は、タイムに関しては律儀に公認記録で勝負することにしている。

天気は晴れ、気温は朝が10度ほどで、昼には暖かくなる。風は少々。レースの条件としては並ってところ。汗で塩まみれになりそう。

0-20km

午前10時、号砲。走りだしは大事。ゆっくり無理せず、と思いつつ、ばっちりとオーバーペースで入る。最初の1kmは3:50/km。呼吸には余裕があって、脚も軽い。調子はいい。

1kmが短く感じて、20kmあたりまではあまり記憶がない。日めくりカレンダーをぺらぺらとめくるようにキロ表示が過ぎていったような感じ。夢の中の出来事みたいで、断片しか思い出せない。

0-10kmの平均ペースは4:02/km。明らかに飛ばしすぎ。だけど感覚的にはこれでもセーブしていた。あわよくばサブエガ、なんて下心がわいてくる。

10-20kmは4:07/km。サブエガはさっそくあきらめた。とりあえず気持ちよく走れている。まだまだ余裕。

ハーフ地点手前にそこそこのアップダウンがある。上りはペースを落として、無駄な力を使わないように進んだ。上り坂の疲れは少し遅れてくるから、快調に上ってしまうと、たいがい坂の頂上を過ぎてからバテる。

20-30km

20-30kmは4:08/km。順調に走っているつもりだったけれど、25kmあたりで中だるみした。微妙なアップダウンの連続でリズムが崩れて4:15/kmほどにペースダウン。3人の集団に追いつかれたのでついていく。2kmほど引っ張ってもらって、だいぶペースが安定した。ずっとおんぶにだっこじゃ情けないってことで、前に出て引っ張ってみたものの、1kmほどでごめんなさい。で、コバンザメに戻る。引っ張る2人の背中が頼もしい。

30-Last

この集団はもう1人吸収して、30kmあたりまで5人で進んだ。そろそろ疲労が出始める。教科書どおりの30kmの壁。集団から1人落ち、また1人落ち、そして私も脱落。引っ張ってくれた2人の背中が遠くなっていく。無理をすればついて行けたけれど、35km以降で撃沈しないように、体力を温存することにした。

35kmあたりは誰も見えない一人旅。きつい。呼吸はまだ余裕があって、脚も残っている。なのに、きつい。栄養的なきつさだろうか。給水は毎回アクエリを取り、塩熱サプリをときどき食べて、10kmにひとつアミノバイタルのアミノショットを食べた。汗でミネラルが足りなくなったか。右のふくらはぎが痛んで地面を蹴れなくなってきた。胸だか脇腹だかに軽い痛みがある。

交通規制していない車道を走る区間があって、次々と車に追い越される。道路の端によけると、路面の凹凸でふらつく。普段ならなんてことのない路面に苦しむ。マラソンは何度走ってもつらいな。1kmが長い。

ペース感覚がなくなって、体感では5:00/km以下に感じる。それでもラップはまだ4:20/kmあたりで粘れている。序盤の貯金があるから、諦めるにはまだ早い。目標タイムはいつだってぎりぎりなんだ。40kmまではなんとか粘って、ラスト2.195kmで燃え尽きよう。

40km地点で時計を見る。細かい計算ができない。でも55分切りはまだチャンスがあると判断した。絞ったぞうきんをもうひと絞りするようにスパートをかける。痛むふくらはぎで強く地面を蹴る。ペースは4:06/kmまで上がった。ラスト200メートルは全力。出せるものは全部出し切ってゴールした。

時計を見ると、55分をオーバーしていた。届かなかった。くそーと思ったら、実際にくそーと言ってしまった。

でも力は出し切れたと思っている。自己ベストを3分更新。そして、3年連続、3度目のサブ3。冷静に振り返れば上出来だ。

走り終わった後は、けっこうふくらはぎのダメージが大きくて、歩くのもつらい。限界付近で死力を尽くした結果だと、ちょっと感慨に耽った。これは深いダメージになるかもしれない。なんて思っていたら、翌日には痛みがほとんど引いて、筋肉痛もなし。私の死力なんて所詮そんなもの。

ゴール後に自販機で飲み物を買って、お釣りを取り忘れた。それもよりによって千円札で。疲れていたのだろう。一番くやしい。

微ビルドアップ

レース6日前。最後の仕上げは、レースペースで楽に走るイメージづくり。駒沢公園8周(17.12km)を4:15/km~4:00/kmのゆるやかなビルドアップで。

Lap (2.14km)TimePace
19:08.94:16/km
29:03.14:14/km
38:41.74:04/km
48:48.94:07/km
58:52.74:09/km
68:45.74:06/km
78:36.14:01/km
88:31.23:59/km
17.12km1:10:284:07/km

最後まで淡々と走り終えた。悪くない。準備はできた。

駒沢公園での練習はこれが今シーズン最後。ぶた公園のぶたとも、パンストをかぶった横顔みたいなジョギングコースとも、しばらくお別れだ。